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2001年年賀状
 
「新年おめでとうございます。 紀元前の青銅器鉄器革命、18世紀の重工業産業革命、いずれも大規模な戦争の時代をもたらしました。21世紀のIT革命は何をもたらすのでしょうか。人間を幸せにするのだという強い信念をもたないと、また愚かな歴史を繰り返すことになりかねませんね」

 年賀状という旧テクノロジーで書ける文章量は上記が限界です。IT革命下のインターネット年賀状では、もっと詳しく書けるところがまさに革命的ですね。

 紀元前の青銅器鉄器革命は、農業生産力を飛躍的に増大させたいわばハイテクノロジーです。ハイテクをいち早く身につけ生産力をつけた国はハイテク武力で近隣諸国を併呑し、より大きな地域を支配し、より多くの冨を集中しようとしました。他国は座して見ていれば滅ぼされるので、自分のところもハイテクを身につけて必死に戦わざるをえないのです。中国の春秋戦国時代はまさにその闘争の歴史であり、秦の統一までの戦争で何十万人もの人が生き埋めにされたりして殺されました。  18世紀の産業革命は、工業生産力を飛躍的に増大させ、その資源供給地や市場を植民地とするための熾烈な競争が大戦争の時代をもたらしました。ハイテク競争は負ければ滅亡を意味するため、食うか食われるかという熾烈な戦いをしてしまうのです。終わった後で冷静に振り返れば、勝った方も植民地はすべて失っており、何故あんな闘争で何百万人もの人々が殺されなければならなかったのか、むなしくなるだけなのに・・・。

  21世紀のIT革命は何をもたらすのでしょうか。  インテリジェントは土地や資源の囲い込みを求めませんから植民地を求める戦争など起こりえないでしょう。インターネットでは国境など無意味です。 ITの競争では、例えばビル・ゲイツのように世界標準を制したものが勝者であり、勝ち組と負け組が地球規模ではっきりすることになります。ごく一握りの勝者が世界の冨の大半を独占し、その他はIT奴隷となるのです(例えばわれわれがwindowsから一日とて逃れられないように)。ハイテク競争での最後の勝者が出るまでは、武力による戦争にはならないでしょうが、アレクサンダーや秦の始皇帝の制覇後をみれば明らかなように、冨や権力の極端な集中の後には必ず、被支配者の反乱により勝者もまた必ず滅ぼされるのです。その時に地球規模での大戦争が起きる可能性があると思います。その戦争はもはや旧来の武器、飛行機やミサイルや原子爆弾ですらなく、壊滅的なコンピュータウイルスや遺伝子を利用し、それにより数千万人が死んだり人類そのものが滅亡する可能性すらあると思います。産業革命後約200年かけて起こったことがIT革命下では20年で起こるかも知れません。  テクノロジーの方は、恐ろしいスピードで進歩しているのに、人間の精神の方は紀元前の人々より遅れている部分もあるのではないでしょうか。  孟嘗君は、貴族であるその父親があまりの冨を独占しようとしているのを見て、何世代後の子孫にまで財産を残そうとなさるのですかと、その無意味さをいさめました。人に対する思いやりが仁で、自分を今日まで支えてくれた人々への感謝の気持ちが義で、独占せず譲り合う精神が礼ということもできます。過剰な冨の独占は、仁、義、礼に反するのです。    愚かな歴史を繰り返さないためには、われわれ人類がどれほど愚かな戦いの歴史を繰り返してきたことかをよく認識し、テクノロジーを殺し合いのためではなく、人間の幸せのために使うのだという強い信念を持つ必要があると思います。  ところが残念ながら、日本はむろん、世界的に見ても、少数の例外を除き、政治も教育も世相も、そのような信念を持っているとは到底思えませんね。これではまた愚かな歴史を繰り返すことになり兼ねないのではないでしょうか。

21世紀も皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
   
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